『 シテール島への船出 』 ～ 国境とは幸せとは愛とは

あなたにとって、国境とは　幸せとは　愛とは

『 シテール島への船出 』

原題： TAXIDI STA KITHIRA

1984年 　　時間： 140分
製作国： ギリシャ映画

監督名： テオ・アンゲロプロス
出演者： ジュリオ・ブロージ
　　　　　 マノス・カトラキス
　　　　　 ドーラ・ヴォラナキほか

1984年カンヌ国際映画祭最優秀脚本賞、国際映画批評家連盟賞　

ペロポネソス半島の南、エーゲ海に浮かぶ島シテール（現代ギリシャ語でキメラ）。愛の女神アフロディテをまつる最古の神殿のあるシテール島は、古くから愛の女神にあやかるために恋人たちが詣でた島として知られ、ワットーの画、ボードレールの詩、ドビュッシーの曲に、美、愛、永遠、悦楽の象徴として描かれていました。

今日は32年前にソ連に亡命した父スピロが帰国する日。埠頭に横付けされたソ連船ウクライナ号から下りてきたスピロは、先妻カテリーナが待つ家へ戻る。32年ぶりに会う夫に、「おなかすいてない？」という第一声の妻の言葉に夫婦の慈しみを感じました。翌日、家族とともに故郷の村へ帰るのですが、しかし村人たちは、先祖の眠る山の土地をスキー場に売ろうとしていた。反発し、騒ぎを起こして追放されるスピロに寄り添うカテリーナ。お金を得ることが幸せなのか。先祖の眠る土地に居続けるのが幸せなのか。人間にとっての価値判断の基準がさまざまであるかぎり、答えは人それぞれに違うものなのでしょう。

警察はスピロをソ連船に乗せるのに失敗し、処置に困って国際水域に置き去りにする。夜、港の記念祭のマイクの前でカテリーナがスピロに「そばに行きたい」と呼びかける。暗い海から、スピロのヴァイオリンの音色が響いてくる――。「一緒に行きたい」という妻。国籍を無くし、国際水域に置き去りにされる夫について行くという年老いた妻の気持ち。32年間も離れていたのに、不変の愛のかたちを感じました。

国境とは人間が作った人為的なものであり、それが不幸のはじまりであるのです。人間の力で国境を乗り越えていくことができる、それをとりのぞく愛の力と幸せとは。

『 こうのとり、たちずさんで 』『シテール島への船出 』。世紀末における救世主・キリストの再来。アンゲロプロスは凄い監督であり思想家です。もっともっと氏の作品をこれからも観てみたいと思いました。

テオ・アンゲロプロス全集 DVD-BOX II

(ユリシーズの瞳／こうのとり、たちずさんで／シテール島の船出)

テオ・アンゲロプロス全集 DVD-BOX I

(旅芸人の記録／狩人／1936年の日々)

テオ・アンゲロプロス全集 DVD-BOX III

(霧の中の風景／蜂の旅人／アレクサンダー大王）

人気blogランキングへ

ブログランキングに登録しています。お手数ですが、こちら人気blogランキングへからです。ご協力お願いします。