『 おとうと 』 ～ あたたかくて、せつなくて【家族という絆】

あたたかくて、せつなくて

この今の時代に必要な映画だと思います。

『 おとうと 』

http://www.ototo-movie.jp/

昨秋、事前に観る作品名がわからないモニター試写会で、本作を観ることができました。そのとき上映前に行ったアンケートにいくつかの映画作品の中に、この『おとうと』の題名も含まれていたのですが、いいなぁ吉永小百合さんの作品は、まだ一度も見たことがないし、観たいなぁと思っていたところ、オープニングで、すぐにこの『おとうと』だと気づき、なんてラッキーなんだろう！と、とても嬉しかったです。

『学校』シリーズ以来、約10年ぶりとなる山田洋次監督による現代劇は、2008年に逝去した市川崑監督の『おとうと』にオマージュを捧げた作品です。『母べえ』でも共演した吉永小百合さんと笑福亭鶴瓶さんが、再度、姉弟役を演じています。

女手一つで娘を育ててきたしっかりものの姉と、大阪で破天荒な暮らしをおくる弟を描きながら、家族とは何かを笑いと涙を交えながら私たちに語りかけてくれます。

山田洋次監督は、思えば『幸福の黄色いハンカチ』や『息子』をはじめとする諸作で、その時代その時代の家族の姿を追い続けてきました。いつの時代も変わらない家族の姿を描く一方で、鋭く切り取る現代社会が抱える問題―「看取り」「ターミナルケア」などを提起しており、決して目をそむけることなくしっかりと向き合わなくてはと感じました。

 

この作品には、スクリーン上には登場しなくても、鍵となる人物、鉄郎を理解しようとつとめていた吟子の夫の存在があります。「彼にはなを持たせてあげよう」と、わが子の名付け親になってもらったというエピソードが、そこはかとないあたたかさを感じ、とても心に深くしみわたりました。

せつなくて泣くになけず、泣いたりしないで、こうした現実をしっかり心にとどめておくべきだと思いながら、スクリーンを見つめていました。

映画のラストシーンで、石田ゆり子さんの言葉で、堪えていた涙が、どっとあふれ出しました。吉永小百合さん、とても美しかったです。スクリーン全体からあふれてくるやさしさのオーラに魅了されました。

市川崑監督の『おとうと』もぜひ観たいです。

鶴瓶さんが本当にとてもいい味を出しており、本当にこんな感じのおじさんって、親戚に一人いそうだよなぁと。楽しくいろんなことを言って笑わせてくれて、とってもあたたかい気持ちになり、それはそれは愉快なひとときでした。そして切っても切れない家族という絆の深さをあらためて大切にしたいと感じました。

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