無念だ ～ 映画 『 さまよう刃 』

映画　『 さまよう刃 』

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寺尾聰さんが最愛の娘を未成年者に殺された

犯罪被害者の苦悩と復讐を体現し、

映画 『半落ち』から５年、

再び我々に"正義とは何か？"を問いかけます。

映画 『 さまよう刃 』を試写会にて。

寺尾聰、竹野内豊、

伊東四朗、山谷初男、酒

伊東 遥

行定勲監督作品の脚本を手掛けてきた益子昌一監督が映画化したもので、少年犯罪にスポットを当てた社会派サスペンスドラマです。いや、ドラマというよりは、これは現実です。この現実から目をそむけることなく、私たちは直視しなくてはならないと思います。

『　無念だ・・・。　寺尾さんが、無念だ・・・！』

映画を見終えて、ぼろぼろとあふれる涙をこらえきれずに、

心の中で叫びました。

映画のラストのシーンで、私が原作本を読んだシーンと同じところで、

もう涙がわっとあふれました。

『　絵摩、今、おまえの復讐を果たしてやるからな。

これからは、父さんと二人で仲良く暮らそう。

もうあんなこわい思いはさせないからな。　』

どうしたら、娘の無念を晴らすことができるのか、死をもって相手に償わせることができないこの世の少年法という法律の中で、正義とは何か？法を守るというのは、誰を守ることになるのか？

原作と映画では設定が同じところもあれば異なっているところもありました。原作本の方が、より衝撃的で文章の世界でのみ可能なあらんかぎりの復讐への思い、正義とは何か悪そのものを表現しています。しかし、映画は、映像でそこをいかに見せていくかということで、寺尾さんのまさに主人公の長峰そのままの、娘を殺された父親の深い悲しみと、やり場のない憤り、復讐にかける思いを、寺尾さんのひと言、ひと言、その姿がすべてを表わしていました。映像や演技が抑制され、多くを語らず、伝えるべきことを豊かに描いています。寺尾さんのすべてを私の心のフィルムに焼き付けようとスクリーンに食い入るように観ていました。

「 私は間違っているのかもしれません。

復讐をすることよりも、相手に死の恐怖を与える方が

相手は、自分のしたことを後悔するのではないかと思うのです。」

と、最後のくだりでありますが、

簡単に相手を殺して楽にさせることが許せなくなり、もっと犯人の少年に死よりも苦しみを与えることを考えたとき、寿命が尽きるまでその死に等しいくらいに恐怖を忘れないで遺すことだと。

寺尾さんが、カッと目を見開いて天を仰ぎ見ていた

あのラストシーンに、すべてが尽くされていると思います。

裁判員制度が始まり、いつ自分がそのことを身をもって考えなくてはいけない事態になるやもしれません。誰もが切り離せない問題なのです。

映画　『 さまよう刃 』

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10月10日から全国公開。

ぜひ劇場でご高覧下さい。

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