『氷屋来たる』
1912年夏、ニューヨーク下町の酒場では、行き場のない連中が安酒に酔っては壮大な夢を語り合って自分を慰めている。そこにセールスマンのヒッキーが登場。彼は毎年酒場の主人ハリー・ホープの誕生日には訪れて、連中に酒をおごり、実現しないであろう彼らの夢をくすぐり喜ばせていたのだ。しかし、今夜のヒッキーはいつもと様子が違っていた。突然、どうすれば本当の心の平和が得られるのかと、連中を説得してまわる彼の身にいったい何が起こったのか・・・・・・。
アメリカを代表する国民的劇作家でありながら、日本では上演機会が少なかったユージン・オニール。4度目のピュリッツァー賞そしてノーベル文学賞にも輝いた氏の作品『氷屋来たる』を新国立劇場にて。少しも緊張の途切れることのない舞台、3時間半あまりのまさに超大作でした。http://www.nntt.jac.go.jp/season/updata/10000125.html
キャストが市村正親さんということで、市村さんの舞台はまだ未見だったのと、新国立劇場へも初めて訪れるということで、とても楽しみにしていました。
暗く重く、ときにおかしみを持って、絶望と死に直面するさまざまな人生が語られ、とてもシリアスな前半。しかし、市村正親さん演じるセールスマンのヒッキーの登場で、人々は本当の自己と向き合うこと、明日やろうではなく、今、動くんだ!と一歩踏み出していきます。
あなた。そう、あなたです!
人間は誰しも、心の中に自分で納得してこれでいいんだと思いこみ、今の人生が自分にとって一番ふさわしい、夢も持ってはいるけれど、傷つくのが恐いから、現実に目をそむけ、勇気のないまま 恐がって一歩も踏み出せずにいるのでは?
市村正親さんが登場すると、その圧倒的な存在感に思わず惹きつけられました。他のキャストの方も本当に長い長い台詞が多く、よくすべて入っているなぁと感心することしきりでした。
タイトルの『氷屋来たる』の意味がよくわからなかったのですが、調べてみるとアメリカのエロティック・ジョークと、キリストの再来を示す聖書の句を重ねているそうです。そうすると、キリストはセールスマンのヒッキーだったのでしょうか。
あなたにもキリストの再来はあるでしょうか?
新国立劇場にて7月8日(日)まで。キャスト全員の鬼気迫る迫力の舞台をぜひどうぞ。
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