ブラウニング・バージョン
「ブラウニング・バージョン」というお芝居を観て来ました。40-50年代にイギリス演劇の第一人者であったテレンス・ラティガンの作品です。
あらすじは、
パブリック・スクールの校内にある教職員住宅の一室。夏休みを控えた、終業式の前日。教師で、古典学者のアンドルウ・クロッカー・ハリスは、心臓病のため明日でこの学校を去ることになっている。アンドルウは人に好かれる性質ではなかった。彼は、教師としても、妻ミリーとの夫婦生活においても、自分が落伍者であるということを認めていた。そんなアンドルウに、生徒や同僚、校長や新任教師、様々な人々が挨拶に訪れる。それは、いつも冷静な彼の心を激しく揺さぶるものだった、というもの。
アンドルウ・クロッカー・ハリス、彼の心だけでなく、観ていた私の心も激しく揺さぶられました。先生という仕事、職業は、えてしてまじめで模範的な人間であってと思うやもしれません。しかし、多くの生徒、そして同僚や上司にそう思われることで、自分というものを保ち続けながらも、本来の自分の心にある真情を舞台の上でクロッカー・ハリス先生は、吐露していきます。周りの誰からも、堅物でまじめ、指導には厳しく容赦ないと思われている彼の心に、最後のお別れに訪れた彼の生徒タプロウが、ひとすじの光を与えます。
「神さまは、遥か彼方から慈悲深いまなざしで、優しい師匠を見守っている」
タプロウが先生へのお別れの記念のプレゼントとして、お小遣いをはたいて買った本に、その言葉を献じています。自分を慕ってくれていた生徒がいた。病、妻の公然の浮気、冷えた夫婦関係、学校を辞めるという中で、ほんのひとときの深い喜びと、このうえないしあわせで、クロッカー・ハリス先生は泣き崩れます。私もぽろぽろと涙が止まりませんでした。
人と人がわかりあうこと、それはたやすいことではありません。そして人を許すということ。様々な思いが去来しました。
手を伸ばせば届きそうな、この舞台の上に「心」がある。そんなふうに感じました。
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